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サービス・イノベーション研究委員会報告

第13回 サービスサービス・イノベーション研究委員会(平成22年9月17日)

 平成22年9月17日午後6時、東京都千代田区の日本記者クラブ大会議室において第13回サービス・イノベーション研究委員会を開催した。角忠夫委員長より開会の挨拶に続き、小坂満隆副委員長から11月3日(水)の午後に開催の「サービスイノベーション・シンポジウム」(主催 北陸先端科学技術大学院大学)の案内の説明があった。
 本日の委員会では、日立製作所の平井千秋氏から「品質・生産性」、キッコーマンの半谷吉識氏から「サービスビジネスモデルのコンセプトと事例」、産業技術総合研究所の谷口正樹氏から「製造業におけるサービス的ビジネスモデル」、三井住友建設の大鐘大介氏とリコーITソリューションズの多和田紀久氏から「サービスビジネスのITインフラと活用」と題する報告があった。

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MOT振興協会の活動状況を報告する橋田忠明専務理事(中央)。
角忠夫委員長(右)、福田一成委員(左)

■第13回 サービス・イノベーション研究委員会での講演概要

1.「ビジネスモデル」:日立製作所 平井氏

 ビジネスモデル類型化の目的として、儲かる仕組みを知りたいということがある。「製造業のサービスシフトには10の儲けの仕組み」があるという類型が出てくればうれしい。すでに儲かる仕組みとしてのビジネスモデルが整理されていて、エイドリアン・スライウォツキー著の「ザ・プロフィット」という有名な本がある。そこにサービスに限らず、ビジネスで利益を生み出す23個の仕組みが整理されている。
 この本で書かれている23の儲かる仕組みの中に、サービスシフトで儲かる仕組みが出てこないかという着眼点で評価してみた。結果として余りうまくいかなかったが、議論させていただきたいので報告する。


「ザ・プロフィット」で紹介されているビジネスモデルを分析

 まず「ザ・プロフィット」に書かれている23のモデルから紹介をしたい。
 「顧客ソリューションモデル」では、特定のお客さんを知り尽くして、そのお客様向けにカスタマイズするとある。

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「サービスシフト」について報告する平井委員

 「製品ピラミッド利益モデル」は、製品のラインアップをうまく揃えて、非常に安いもので他社参入を防ぐということと、非常に高いものを流用して収益を得るモデル。
 「マルチコンポーネント利益モデル」は、同じ製品であってもお客さまの置かれた場所等の状況によって、適正な価格をコントロールできるモデル。サービスだけでなく一般論として整理されている。中には「起業化精神を持つことが、儲かる仕組みである」とあるが、否定はできないが、役に立つ内容ではないと思われる内容もある。
 目につくのに「インストール・ベース利益モデル」というモデルがあって、製品を売った後にその製品に関する消耗品の販売、コピー機のトナーなどで収益を得るというもの。


 これを基にサービスシフトについて考えた。

(1)顧客ソリューションモデル

 特定のお客様にしがみついて、そこのお客様向けの製品を一生懸命やる。製品は余り本来カスタマイズをすることができないが、サービスでカスタマイズして、製品とサービスを組み合わせてお客様向けのバリエーションを作っていくことが1つの儲かる仕組み。

(2)製品ピラミッド利益モデル

 サービス自体を安くして広くばら撒くことで他社の参入を防ぎ、製品に不足するサービスで収益を稼ぐ。
 例えばエレベーターなどで見られる。製品自体を特に安くはしないが、メーカー側の利益は薄くして、サービスで収益を稼ぐ。

(3)時間利益モデル

 時間利益は、製品をいち早く出して儲ける。サービスでの適用については、余り思いつかなかった。

(4)利益増殖モデル

 ある自社の資産を色々な形で活用し収益を上げるモデル。自社の物流が構築できた後で、他社の物も運ぶとか、サービス員を常駐させるステーションができたら、それを運用して別なビジネスに出るといったサービスシフトである。消耗品などでは、良くあるビジネスである。

(5)ブランド利益モデル

 ブランドを作ることが収益を上げる方法。製造業で得た信頼で、サービスに出るやり方がある。例えば信頼のブランド、「日立だからこのサービスができます」という。

(6)販売後の利益モデル

 アフタサービスのことを言っていて、他社が出した製品に対して付属品を提供するビジネス。これをサービスに置き換えると、他社が出した製品に対して、サービスビジネスをするモデル。エレベーターなどでは、サードベンダーが保守をしている。

(7)デジタル利益モデル

 ICTを活用して、全く新しい利益モデルが出来る。ログデータを活用して、新しいサービスを提供するビジネスモデルである。

2.「サービスビジネスモデルのコンセプトと事例」:キッコーマン 半谷氏

 食品分野でB2Cのところを検討したので報告する。
 商品によって一般家庭向けのコンシューマー向けと、業務用加工用の2通りが存在している。醤油を例に取ると、両方ある。弊社が作って、スーパーで買っていただくのが普通である。この場合、メーカーが直接スーパーへ納品するのではなくて、問屋を経由して量販店に行って一般家庭に行く。製品の流れはB2Cではあるが、途中で問屋を経由するので、直接お客様には行かない。
 直接の取引に通販がある。通販では、限られた特殊なものしか売っていない。量販店がネットスーパーを経営している。お店を持たなくても、お店と同じものが買えるシステムがある。セブンさんとかイオンさんなどは店舗の品揃えと同じものをネットでやっている。5千円以上を購入すると送料もただで送ってくれるので、お年寄りは使っている。

業務用・加工用は、直接販売している

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「食品分野のB2C」について報告する半谷氏

 もう一つの流れとしては、業務用・加工用がある。海苔のつくだ煮屋などからは、直接買っていただいている。 業務用でもすし屋さんなどは、業務用の問屋さんを通って納入されている。大手のお客さまは本部があって、くら寿司などは、個々の店舗ではなく本部が一括して購入しているので、末端のお客様と個々に直接販売をしていない。
 メーカーから直接お客様へのパターンは通販しかない。
 通販がメジャーな販路になるかを検討すると、量販店がネットスーパーを展開しているため、我々が同じ製品を売ることは不可能である。ネットで販売できるのは量販店が扱わない、例えば、糖尿病の患者さん向けの特殊な製品などである。
 こうやって問題を考えると、B2Cで不特定の消費者個人向けには問題がある。直接お客様から来るのではなく、問屋経由、量販店から来る。例えば、お客様から非常に当社へのニーズが強くあっても、PBでコンペジターがあると自社の製品を優先する傾向もあるので、なかなか入れてもらえない。こういうシステムではうまくサービスが出来ない。末端のお客様にサービスをする方法が見当たらない。

消費者と接触はほとんどなく、直接サービスすることが難しい

営業も最終消費者のところに行かない。我々が消費者の方に宣伝しているのは、テレビとか紙の媒体である雑誌などの範囲で、実際には消費者と接触はほとんどない。実際、工場見学に見えるのはお子さんや老人会などが圧倒的に多くて、実際に消費してくれる主婦が見えるのは少ない。なかなかこの流れでサービスをすることは難しい。
 不特定の個人に対しては難しいので、特定の個人に変えることが出来ないかと考えた。ここまで皆さんの話を聞くと、比較的個人に売るのではなく、会社にモノを売って、その後、サービスをし続ける形態が多いように感じた。これを食品にも使えないかを考えた。

有料モニター制度を構築して、顧客ニーズを把握する

 弊社の製品を買ってくれた方を登録して、そこにサービスをしていくやり方を考えた。例えば、有料のモニターで、新製品を出すとそれを送って感想を聞くことをやる。これを特定の人にお願いをする。
 例えば年間3千円を頂いて、新製品をすべて送ってその感想を頂くというやり方である。宣伝が出来たり、使い勝手などを聞けるというメリットがある。

災害備蓄品の管理、保管サービス

 食品で確実な売り上げがあるのが災害備蓄品であると言われる。災害備蓄品というと、乾パンや水とかというイメージがあるが、最近は、美味しいものを備蓄するようになっている。ただ、預かった後、災害が沢山あるわけではないので、無駄になることが多い。仮に災害が起きずに賞味期限が切れたものは、弊社がきちんと対応する。サービスを提供しながら、お金に換えることが出来る。
 以上のサービスは、案の段階である。

3.「製造業におけるサービス的ビジネスモデル」:産業技術総合研究所 谷口氏

 製造業におけるサービス的なビジネスモデルとして、どういうものがあるのかを体系付けることを目的に考えた。ビジネスモデル、それ自身は利益を生み出す製品であるとか、サービスの事業の戦略や、収益構造である。もう一つ別な言い方では、ビジネスの設計思想であって、どのような価値を誰に提供するのか、その価値をどのように提供するか、提供に必要な経営資源は何か、提供した価値に対してどのように対価を得るか。こういうところがファクターになる。

サービス業におけるビジネスモデルを分析する

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「製造業におけるサービス的なビジネスモデルの体系付け」に関して報告する谷口氏

 製造業も幅が広いし、サービス自身もかなり幅が広い。どのように取り組むかを考えた。
 「製造業のサービスシフトとは何か」というと、製造業は製品を媒体としてサービスを受けてもらうことを促進していく。強引だが、サービス業におけるビジネスモデルからアナロジーが可能であるとして問題を簡潔化した。

 サービス業として取り上げたのは、経済産業省が『ハイサービス日本300選』(平成19年から20年)を委託事業としてサービス生産性協議会を通じて、ベストプラクティスの表彰をした。4半期に1回、20、30社を選定して表彰した。269社を選んだが、昨年の事業仕分けにあって予算が減ってしまい、300選まで行く前に中断した形になっている。それが報告書にまとめられている。
 基本的にはサービス業を選んでいる。選定の視点をあらかじめ決めて選んだ。
「科学的・工学的アプローチ」、「サービスプロセスの改善」、「サービスの高付加価値化」、「サービス人材の育成」、「国際展開」、「地域貢献」の6つの視点で選定した。
 属性の分析をしていて、市場特性として、イノベータ型、ニッチスペシャル型、マルチプレーヤー型。業態特性として、コーディネート型、ソリューション型、ハイバリュー型。取引特性として、B2B型、B2C型、C2B2C型、B2B2C型のように分けてある。


科学的・工学的アプローチとサービスプロセスの改善

(1)科学的・工学的アプローチ

 科学的・工学的アプローチとは、データに基づくサービスの最適化をすることである。
 アイスタイルなどの口コミサイトを使って情報収集を行う。イーグルバスのダイヤの最適化。くら寿司は、顧客データの嗜好を集めて、寿司の供給の最適化をした。システムロケーションは中古車の車輌の資産評価を大量のデータを使ってやった。ハッピークリーニングは、クリーニングの衣服を電子カルテ化して、例えば着物とか高級なものとかをすべてクリーニング対応をすることをしている。

(2)サービスプロセスの改善

 一方、サービスプロセスの改善では、プロセス見直しの最適化がキーとなっている。
 星野リゾートはノウハウを持っているので、宿泊業の再建のコンサルに取り組んでいる。
 加賀屋は「もてなし」というより、バックヤードで自動搬送ロボットを使っていて、プロセスで客と接しないところを徹底的に自動化している。
 中古車のガリバーは、ITを使って査定を低コスト化した。恵寿総合病院は電子カルテの先駆け的な成功の実例。
 旬材は魚の卸し、ネットワークで日本中の卸しとやり取りして、普段売れないような魚の販売で成功している。スーパーホテル、べネフィット・ワン、こういうところがこのカテゴリーで表彰されている。


儲けをどのように得ているかを分類

 具体的にビジネスモデルの類型分けは、儲けをどのように得ているかを分類した。
 中小企業を対象に簡単な分析しかできていないが、大体どのようになっているかを分類した。

(1)データ取得の代行

データを取る仕組みを持って、あるいは作って、それに基づいて関連業界をコンサルティングする。アイスタイルは化粧品。ハー・ストーリィは、インターネットを経由して大量の女性の会員を持っていて、「こういうものどう思う」調査しようと思うと、会員から大量のデータが戻ってくる。そういうデータに基づいて、コンサルをしている。

(2)データ取得・解析によるニーズフィッティング 

データを取得して、解析して、顧客のニーズにあったものを提供していく。イーグルバスではバスのダイヤとか顧客の行動を分析して出す。オギノはスーパーで、会員カードのデータをもとに、いつどういう物が売れるとか、どういう販促をするとどれくらいのものが売れるとかの活動をしている。旬材とか、ネットオフもそうである。

(3)データ取得・解析によるムダ・ムラの排除

同じくデータを取得して、そこから解析して、無理、無駄を排除する。くらコーポレーションとかトワード物流。

(4)ICTによる人の代替

ICTによって人の代替をすることで効率化する。加賀屋とか、スーパーホテルとかで、フロントの簡略化などによって合理化をしている。

(5)ICTで付加価値を付ける

 ICTで付加価値を付ける。ガリバーとかシステムロケーションは中古車販売。大量のデータを人では出来ないことをさばくことで、あなたの車の価値をリアルタイムにも出せることで付加価値を出している。電子カルテ、ぐるなびもそうである。

(6)カンバン方式(ジャストインタイム)の導入

カンバン方式、ジャストインタイムを導入する。よく取り上げているのは病院、病院はなかなかIT化が進んでいないと言われていて、そこに入ってITコンサルが儲けている。流通、食品などのバックヤードに主に導入されている。


4.「サービスビジネスのITインフラと活用」:三井住友建設 大鐘氏、リコー 多和田氏

 サービスビジネスにITインフラがどう関わり合ってくるのかを考えてみた。B2B、B2C分野とも、川上の受注前活動がビフォアサービス、川中の生産活動がマネジメント・サービス、川下の販売後活動がアフタサービスと捉えている。
 B2C分野では、川上のビフォアサービス事例としてアシックス、川下のアフタサービス事例として日産、ワコール、シーボンを、B2B分野では、川中のマネジメント・サービス事例として三井住友建設の施工管理サポートサービス、川下のアフタサービス事例としてコマツ、リコー、GEの取り組みを調査・分析整理した。
 各サービスの位置付けを定義した上で「製品の“機能や性能による差別化”には、もはや限界がある」こと、「生活者の消費行動が劇的に変化してきている」こと、そして「製造業におけるサービス力とは何か」について事例を交えながら報告があった。

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「サービスビジネスのITインフラと活用」と題し、報告する多和田氏(左)と大鐘氏(右)。

ITインフラで、ビフォアとアフターの距離がなくなる

 各サービスの位置付けの定義(仮説)として、ビフォアサービスとアフタサービスは密接に関連しており、その目的・役割は、ビフォアサービスが「集客」にあり、アフタサービスが顧客の「固定化」にある。このサイクルの仕組みが重要である。
 買い換え需要や買い増し需要を考えた時、適切なアフタサービスこそが、次期購買のためのビフォアサービスとも言える。こういった関係によってサービスが連携している。  これら上・下流からの情報をもとに、より柔軟性、効率性の高い生産体制を提供するのがマネジメント・サービスで、代表的なものにPOSシステムがある。B2B、B2C分野とも、この構図は同じで、ITインフラを活用することで、ビフォアとアフターの距離がなくなっている。

差別化を図るため、企業のサービス力が問われる

 製品の“機能や性能による差別化”は限界の状況にある。日用雑貨、耐久消費財や建物に至るまで、特定のメーカーにこだわり続けるユーザーは減りつつある。
 それは、日本をはじめとする先進国の工業製品は、どれもクオリティが高く、そのことが製品の機能や性能の横並びを招き、結果として差別化することを難しくさせている。
 ある企業が優れた機能を持つ新製品を市場に投入すれば、競合他社がすぐに追随する。結果として、ユーザーは特定のメーカーにかかわらない消費行動を取るようになる。
 そこで、顧客へのサービスにより差別化を図ろうとする企業が増えてきている。

消費構造は「アイドマ(AIDMA)」から「アイサス(AISAS)」に変化

 生活者の消費行動が劇的に変化している。
 注目すべきは2004年ぐらいまでアイドマ(AIDMA)(注1)といわれた消費行動、消費者の行動パターンが、2005年頃からは、アイサス(AISAS)(注2)と言われる行動パターンへと変化している。
 インターネットを介して、ネット上の“ブログ”や多彩な“コミュニティ”に蓄積されている当該商品に対する「既購入者の評価情報」を入手・共有し、購買の是非を判断する。そしてまた、情報提供が増殖・加速していく。このSearch→Action→Shareのサイクルがネットの世界で広がっている。
 商品提供側のメーカーとしては、このITインフラの活用の如何が、サービスビジネスを成功に導くカギとなってきている。

プラスアルファのサービスで商品力を強化している

もう1つ注目すべきこととして、「問われる製造業のサービス力」がある。競争優位性のカギは「顧客軸 でのサービス」にあり、成功している企業の多くは、顧客が「オンリーワン」感を持てるような「製品力+α」の何かを持っているという点である。その事例を少し紹介してみる。

(1)アシックス

 アシックスは、全国展開するウォーキングシューズ専門店「歩人館」で、3Dレーザーを用いた測定器で足のサイズを詳しく計測してくれる。シューフィッターという専門の販売員がいて、足に合うぴったりのシューズを探してくれる。つまり、“その人だけのオンリーワン”を提供している。

(2)シーボン

 シーボンという会社は、「お客様の肌に最後まで責任を持つ」ことをキャチフレーズに、会員制で化粧品を製造・販売しているメーカーである。購入金額に応じて、この会社が独自に展開するフェイシャリストサロンでのサービスが無料で受けられる。
 また、プロのフェイシャリストが自分の肌に合った化粧品をアドバイスしてくれる。ここでもオンリーワン感を持てる“+α”がある。

(3)日産自動車

 日産は、純正カーナビに対応した「カーウイングス」という会員制サービスを運営。最短ルート検索等、会員向けの魅力的なコンテンツが用意されている。  人的なオペレーターによるサービスも提供している。

(4)ワコール

 ワコールは、“はいて歩けばエクササイズ”というキャッチフレーズで、「スタイルサイエンス」という、商品そのものが機能になっているボトムインナーを製造・販売している。   シェイプアップ、ダイエットを目指す人々は、一人ではなかなか長続きさせることが難しいことから、顧客の継続使用をサポートするコンテンツが盛り込まれた各種Webサイトを自社で運営している。

米・GEの航空機エンジン事業の事例

 製品のネットワーク化によるビジネスの事例として、GEの航空機エンジン事業がある。
 彼らのコンセプトは「エンジンの稼動時間当たりで、支払い価格を決める」というもの。エンジンが故障し稼動レベルが一定水準を下回った場合は価格をダウンさせる。GEは「プロダクト」+「サービス」に乗り出した。
 先ず、保守メンテナンス事業のM&Aや、主要部品の共有化等によるコストダウンにより、「保守・メンテナンス事業」を強化した。
 次に、遠隔モニタリング技術への投資を行い、エンジン自体をネットワーク化。遠隔からエンジンの稼働状況をリアルタイムに監視する、スマート・ビジネスを展開。さらに、巨大なGEグループならではの低利の資金調達能力を活かし、金融リース業の子会社と組み合わせて航空会社に対する「金融サービス」(ファイナンス・ビジネス)を展開している。
 航空会社にとっては、GEはエンジンメーカーとしてだけではなく、保守メンテナンス会社であり、ファイナンス提供元でもある。

リコーのサービスビジネス

 リコーのサービスビジネスは、リコー製品、OA機器のサービスが中心である。もともとリコーはメーカーではあるが、アフタサービスによる収益も大きな割合を占めており、ハードメーカーであるだけでなく、サービス業的な側面も持っている。
 お客さまに対し、ダウンタイムゼロを実現する目的で、お客さまの機器とリコーの間をインターネットで結んで遠隔診断をしている。最近では、ビフォアサービスとなるが、お客様の出力環境についてパソコンを持ち込んで調べて、どのフロアのどのセクションではカラーコピー、ここには卓上型、ここには集中型のプリンター等々、といった最適化の提案をしている。
 アフタサービスでお金を頂く以外に、お客様のドキュメントに関わるサービスをすべてアウトソーシングで一括して引き受けるサービスにも取り組んでいる。
 リコーは中小企業に強いこともあり、お客さまのPCとかサーバーの保守とか診断サービス、ハウジングサービスやITのサービスもしている。OA機器サービスというか、トータルでオフィスソリューションを提供するビジネス形態に変わってきている。

三井住友建設のマネジメントシステムサービス

 三井住友建設の施工管理用マネジメントシステム「Foreman.net」には、作業員6万7千人のデータが蓄積されている。我々内勤部門だけでなく、本店と作業所間、協力会社間でも情報を共有して施工管理の効率化につなげている。
 作業現場での工程情報を、例えば工業化製品を作っているPC工場等と情報共有することで、納入先現場の工程進捗に合わせた工場ライン調整等、PCメーカー側の生産調整に活用している。決められた期日にジャストインタイムで搬入することが出来ていて、お互いの効率化が図れている。このような仕組みで、作業員・作業内容の見える化・共有化を進め、管理の効率化を目指している。

モノ、情報、コンサルティングを三位一体化してソリューションを提供

 サービスをアンテナとして、顧客満足度を追及することが求められている。
 サービスによってお客様を自社のファンにできれば、お客様を自社ブランドに留めることができる。顕著な例がワコールの事例である。
 お客様との接点、アンテナ、マーケティングの基盤としてITインフラを利用することで成功している事例が多くなっている。

小坂副委員長:製品の利益は、瞬時である。その場で儲かるか儲からないかが分かる。サービスの場合は積分で考えないといけないと考える。積分の利益を考えると、増やすために色々な行為それ自体はお金が取れなくても、トータルとして製品が売れたり、お客様が続いてくれたりすること自体がサービス化の目的のように感じた。

大鐘:ビフォアサービスとアフタサービスの表裏一体化が進む。

角委員長:製造業のサービス化のゴールである。サービス化は進むが結局はハードを売っている。コムトラックを含めてサービスはサービスの事例である。それとハードウェアは、IBM式に圧縮してサービスでビジネスをするという両極端がある。

大鐘:これを突き詰めると、自社がどのようなベクトルに進むべきかの考え方がパターン化できる。

角委員長:考えてもらうための材料の提供が本委員会の最終ゴールである。

橋田専務理事:平井氏が言われた「儲かる仕掛け」が重要であると思うがいかがか。

平井:企業では重要である。サービス化は「製品の価値を上げるためのサービス」と「ビジネスモデルを変えるためのサービス化」がある。重なっている部分もあるが、両方それぞれある。価値を上げるサービスは技術者も考えられるが、ビジネスモデルを変えるサービスは技術者の頭では考えられない。

角委員長:製造業のサービス化は幸いモノがある。ソリューションは、モノにこだわらすに考える。その両極端を考える必要がある。

【注釈】
(注1) アイドマ(AIDMA)とは、生活者の消費行動パターン。注意(Attention)、 関心(Interest)、欲求(Desire)、 記憶(Memory)、行動(Action)を意味する。
(注2) アイサス(AISAS)には、気付いて(Attention)、関心を持ち(Interest)、サーチ(Search)してから購入(Action)するという購買行動に対して、情報を共有する(Share)という行動が追加されている。


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