一般社団法人日本MOT振興協会

ホーム事業内容調査・研究事業知的財産委員会›知的財産委員会報告2011年第13回

知的財産委員会報告

第13回 知的財産委員会報告

 平成23年7月13日、日本記者クラブ(東京・内幸町)にて、第13回知的財産委員会を開催した。委員会の冒頭、荒井寿光委員長から「中国新幹線問題に見る日本の特許・技術戦略は、非常に重大な意味を含んでいるので、協会のホームページ等で特別掲載してはどうか」との提案があった。妹尾堅一郎教授や秋元浩社長らから、風力発電のGE特許やドイツのバイオメティックス、グーグルとマイクロソフトなど5社連合のノーテル特許問題、植物工場の標準化など、今後、日本にとって重視すべき最先端分野における特許問題が相次いで表面化しているとの指摘があった。
 その後、石田正泰副委員長から「MOTにおける知的財産戦略の考え方―実効性に関する方法論の提案−」のテーマで説明があり、意見交換を行った。

■第13回 知的財産委員会での報告

 石田正泰副委員長が「MOTにおける知的財産戦略の考え方―実効性に関する方法論の提案−」のテーマで説明した。
 それによると、市場が巨大化しており、日本は個別技術では強いのにシェアが低下している。日本のビジネスモデルの競争力は悲観的である。石田氏は、「日本は国の施策が弱く、他国の施策をも活用した世界のビジネスを創造する積極性が欲しい」と強調した。
  総合政策的対応が必要で、実効性要素をつなぐ方法論としては、(1)知的財産基本法の目的に沿った知的財産戦略、(2)戦略論、(3)施策・運営論、(4)組織・機関論、(5)法律・制度対応論、(6)知的財産の活性化・知的財産契約論−−を検証する必要がある。
 特許庁の国際性や中小企業向け経営戦略の定着性があり、産業界では、経営が知財を取り込むことや、知財学会もそのレベルに来ており、経産省や弁理士会なども、知財制度を使って事業戦略を強化する方向に進むべきである。

 石田副委員長は、資料に沿って、逐次、詳細に説明した。
 (I)知的財産基本法の目的に沿った知的財産戦略では、
  (1)知的財産基本法の目的
  (2)目的達成のための基本的施策
  (3)知的財産経営

 (U)戦略論では、
  (1)知的財産ポリシー
  (2)技術経営(MOT)における知的財産戦略

 (V)施策・運営論では、
  (1)技術・製品+特許戦略方針
  (2)知的財産コンサル組織の再編成
  (3)知的財産戦略の考え方
  (4)知的財産活用戦略の基本

 (IV)組織・機関論では、
  (1)知的財産情報の一元管理化
  (2)Public Domain(公知)情報機関編成
  (3)特許権等管理事業法の新設
  (4)知的財産経営における人材

 (X)法律・制度対応論では、
  (1)産学連携における知的財産政策
  (2)著作者人格権について
  (3)共有特許に関する特許法(73条)の原則と特約
  (4)職務発明問題(特許法35条)
  (5)独占禁止法のイノベーション促進機能
  (6)通常実施権の登録制度

 (Y)知的財産の活性化・知的財産契約論では、
  (1)国の国際競争力、企業の持続的発展(知的財産基本法4条)
  (2)事業者の責務(知的財産基本法8条)
  (3)まず知的財産ありきからまず事業ありきへ
  (4)持続的発展にはオリジナルイノベーションが必須
  (5)オープンイノベーション
  (6)オープンイノベーション選択理由
    @.経済・産業の現状の観点から、
    A.知的財産制度、性質の観点から、
    B.経営戦略の観点から
  (7)オープンイノベーションのステップ
  (8)オープンイノベーションと知的財産契約
    @.オープンイノベーションと知的財産契約を検討する場合のキーワード、
    A.オープンイノベーションと知的財産契約を検討する場合の基本的理念・施策、
    B.知的財産契約の対象と種類、
    C.オープンイノベーションと戦略的知的財産契約のフロー、
    D.知的財産契約実務対応−−など。

■第13回 知的財産委員会での意見交換

 石田副委員長の講演の後、各委員から発言があり、整理すると以下の通りである。

(1)米国と比較すると、イノベーション・エコシステムなど、使う側も使われる側も、その段階に行っていない。官に任せず、民間がやるべきである。

(2)日商と東京都が、例えば、秋葉原の知財センターのように、都の資金による知財の活用は契約だとの方向で推進している。

(3)政府の知財戦略本部の委員をしていて、次の2点を指摘できる。
 その1は、半年かけて7分野15項目を精査したが、直視すると悲観せざるを得ない、
 その2は、「標準」を取ることが自己目的になっていて、iPs細胞の例を見ても、技術共通化、品質管理など「戦略的標準」が浸透していない。

(4)中国はやっているが、日本は、産業界のニーズに対して、法律を踏まえて、政策も、ビジネスもきちんとやっていない。製薬企業では、1万件のうち、成功確率は8%と言われる。


 こうした議論の後、荒井委員長は「21世紀は知識社会であり、日本人の創造性、クリエイティビティの仕組みが問われている。現在の特許庁や経団連に求めるのは、これ以上は無理と思われ、知財基本法や知財戦略本部を考えると、今こそ日本人の活躍の仕方やそのためのビジネスモデルを考えるべきで、そのためには、制度や技術を民間が主導的に進める必要がある」と述べた。


Copyright © 2009 Japan MOT Association. All rights reserved.