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「女性の活躍舞台づくり」委員会

第41回「女性の活躍づくり」委員会議事録

1.第41回会合の概要

◇日時 2024年11月14日(木)12:00-14:00

◇場所 日本記者クラブ 9階 小会議室

◇出席者 講師・行木陽子(中央大学特任教授、NPO法人日本女性技術者フォーラム理事長)、板東久美子(会長、日本赤十字社常任理事)、國井秀子(副会長兼委員長、芝浦工業大学客員教授)、守屋朋子(副委員長、ITコンサルタント)、牛尾奈緒美(監事、明治大学情報コミュニケーション学部教授)武川恵子(諮問委員、昭和女子大学教授、女性文化研究所所長)、本間美賀子(BIPROGY叶l的資本マネジメント部風土改革室)、跡見順子(帝京大学先端総合研究機構特任教授、東京大学名誉教授、東京農工大学客員教授)、吉祥瑞枝(研究・イノベーション学会JSRPIM副会長、JWSE女性エンジニア活生分科会(主査)、日本化学会フェロー、サイエンススタジオ・マリーSSM主宰)、M口治孝(専務理事兼事務局長)、田中幸子(事務局員)

2.議事内容

M口治孝専務理事兼事務局長の開会挨拶・協会活動報告と今後の予定に続き、國井秀子委員長による挨拶、講師の行木陽子氏の紹介があった。

●行木陽子氏の講演内容 テーマ:「女性技術者ネットワークと成長を支えるコミュニティ〜多様性の時代の女性活躍に向けて〜」

・日本女性技術者フォーラム(JWEF)は1992年創立の任意団体だったが、NPO法人として2024年2月20日に東京都の認可を受けた。女性技術者とその関係者が自発的に参加できるコミュニティで、現在、個人会員75名、法人会員15社、学生会員10名に賛同して頂いており、経済産業省がアドバイザーで、女性技術者のキャリア支援、STEM女子学生の育成支援、学生・若手の海外渡航支援、女性技術者の奨励賞表彰などを行っている。

・JWEFの部会では、学び、メンタリング、キャリアサポートなど様々な活動を展開しており、オンライン活動により、地方在住の会員も増えている。2023年には、日本IBM COSMOSとの共催で量子コンピューター見学会を実施。また、キャタピラーとの共催で機械工作とプログラミング体験会を実施し、次世代理工系人材に繋げることを目指している。

・JWEFでは、女性技術者に贈る賞を2009年から毎年奨励賞1名(審査員特別賞0〜2名)を表彰し、女性技術者のキャリアモデルを社会へ発信している。

・JWEFの会員の年齢層は、30代〜60代が多いが、10代、70代の方もいらっしゃる。
業種は製造業が52%と多いが、情報サービス、学術、教育など他業種の方がおられ、産業界と役職を超えて交流ができるというのは、JWEFならではのことと思っている。

・日本のジェンダーギャップ指数は2006年に80位だったが低下し続け、2023年には125位となった。2024年にわずかに上がり、118位だが、G7の中で最下位だ。

・OECD諸国の分野別大学等入学者女性割合(2021年)は、自然科学・数学・エンジニア・建築分野で最下位で、Infomation and Communication Technologiesの分野では統計すら取っていない状態だ。日本の大学では、女性学生の割合が、理学で3割以下、工学で2割以下と低い状態だ(文部科学省・令和5年度の統計)

・科学技術・学術分野の女性研究者の割合は、2割以下と少なく、女性ノーベル賞受賞者は米国11名、欧州11名だが、日本は0名のままだ。

・2022年のOECDの学習到達度調査では、日本の15歳は男女とも科学的リテラシー・数学的リテラシー共1位を取っているが、高校生になると「女性は理系の進路に向いていない」という無意識の思い込みが影響するようだ。ただ、女性保護者が理系出身の場合、その子(女子)が理系の進路を選択する割合は、高い傾向がある。

・日本の中学校では、理数教員の男性比率が高いことも女子の進路選択に影響していると思われる。性別によるアンコンシャス・バイアスが働くためか、小学校では理科が好きと答える女子児童が7割であるのに対し、中学校女子生徒では4割程度に減少してしまう。

・昨年モンゴルを訪問し、2016年からScientific Organization分野で男女比がほぼ半々で推移し、さらに、Information Technology分野の女性割合が2011年に0だったのが、2021年に24%まで伸び、Business Law,Jurisprudence分野でも0から63%に伸びていることを知り衝撃を受けた。これは、10年の間に女性が情報工学などを学べる環境を作り、学ぶ支援を徹底的にした結果ということだった。モンゴルでは女性の大学院進学率も2014年から65%台に伸びている。

・スイス国際経営開発研究所のギンカ・トーゲル教授は、女性比率が全体の中で1人(15%)の場合、「象徴(トークン)」となり、一人が女性全体を代表すると思われがちで、25%の場合、「マイノリティー」女性も一人ひとり異なるという意識が生まれる。女性が35%になると「ティッピングポイント」性別という属性を気にせずに認識されるようになる、という女性比率の「ティッピングポイント」を提唱している。

・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを取り入れ、女性の意見によりイノベーションが起き、商品企画し、改良を加え、売り上げが2倍に伸びれば、すべての社員に恩恵がある(プロダクトイノベーション)。開発・製造・販売の過程においても改良が加えられる「プロセスイノベーション」も起きている。

・男女の性差を考慮した研究も創薬、診断、臓器移植、シートベルトの設計などの分野で拡大してきている。

●質疑応答

・男女の性差研究には、大変費用がかかる。サポート体制をもっと強化するよう仕組みを考える必要がある。

・東大の女子学生の割合は全体で2割に留まっている。東工大で女子枠を作ろうとした際も反対意見が起きたそうだ。国立大学の多様性についてアピールして行きたい。根本的な入試改革も必要だ。

・IBMは外資系なので日本企業に比べたら女性社員の割合は多かった。一般の日本企業の現状を知って驚いた。

・企業として生き残り、組織を進化させるためには、男女、外国人にこだわらず良い人材を集める必要がある。男女の賃金格差を無くしていくことも重要だ。

・日本も女性ノーベル賞受賞を目指すため、努力すべきだ。小学生の時から保護者の意識も含めて教育改革していく方向に持っていきたい。

・研究者は研究のみに徹してしまい、教育の経験がないため、裾野が広がらない。

・地方には製造業の工場が多く、女性に工場長になって欲しいが体力的な面で重労働を伴うため、なかなか難しい。体力面を補うロボットスーツの活用・開発もまだ十分ではない。

・OECDの調査でせっかく日本の15歳が男女とも1位なのに、高校生になると女子の科学分野選択がガクンと減ってしまうのを防ぐには、本人よりも保護者・教員の認識を大幅に変えていく必要があると感じる。

・JSTでは保護者・教員の意識改革を進めるための助成金を出して取り組みを始めている。

・現在はノーベル賞級の研究はチームで行われることが多いと思うが、深層的ダイバーシティに女性が多いことによりプラスの要素が発生し、研究成果が高まるという実証データがある。異分野の研究知見を持った人が集まることにより、イノベーティブな発見が得られるので、その意味でも女性がチームに入った方がよいという議論に繋げて行きたい。

3.次回の会合は、未定。


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