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サービス・イノベーション研究委員会報告

第6回 サービス・イノベーション研究委員会(平成22年2月5日)

平成22年2月5日午後6時、東京都千代田区の日本記者クラブ会議室において第6回サービス・イノベーション研究委員会を開催した。今回の委員会では、「富士ゼロックスにおけるサービスへの取り組み」と題して富士ゼロックスの武田優氏から、次に「リコーグループのサービスビジネスへの取り組み」と題して、リコーITソリューションズの多和田紀久氏と荒畑義隆氏から報告があった。
報告に先立ち、角忠夫委員長から「産業のサービス化の中でITをどう活用するかの側面と、もう一つはIT産業がサービス化をしている側面。従ってモノからコト、すなわちサービスとか、ソリューションとか、ソフトウェアとか、箱からモノへと質的な変化をしている。それをリーディングしているのはITだと思うので、IT業界自体がどうなっているのか関心がある。プロダクティビティなどの側面について、お二人の話を伺いたい」との話があった。

■第6回 サービス・イノベーション研究委員会での講演概要

1.富士ゼロックスにおけるサービスへの取り組み

 富士ゼロックスの武田優氏から「富士ゼロックスにおけるサービスへの取り組み」と題して、グローバルサービスの展開、プロダクションサービスの展開、コンビニサービスの今後の展開の3点について話がされた。

(1)富士ゼロックスの原点はサービス業である
 − 常に最良のコンディションで機械を使える −

 富士ゼロックスの原点は物売りではないと、社内でよく言われる。当初複写機のレンタルを通し、「複写サービスという効用」を提供する企業としてスタートした。この時にどういうサービスレベルを提供できたのか。「常に最良のコンディションで機械を使えることをお客様に提供する」。常に最良のコンディションにあるとは「コピーの質が良く、故障がなく、万一故障したとしても対応が早く、修理時間が短いことの意味だ」と教えられてきた。
●70年代、富士ゼロックスでは、これらの条件を達成するために、7つの機能を有機的に結合した体制を構築してきた。営業の窓口、複写機の使用方法の講習、お客様支援の窓口、故障修理の対応、消耗品の配送、お客様問い合わせ窓口、新しい効率的な複写機の活用方法の社内開発を、お客様に提示するという形で7つの役割を担ってきた。
●90年代に入り、アナログ複写機の時代からディジタル複合機の時代になると、人的な人手によるサポートからネットワークを使ったサポートへと変わった。電話回線、FAX回線を利用する遠隔管理サービスの提供が始まった。
●インターネットの時代になって、電話線の時代では月一回データ吸い上げであったものが、現在では毎日情報を吸い上げている。

<What’s Document ? Why Document ? >

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富士ゼロックスが取り組むサービスビジネスの 現状を説明する武田優グループ長

ドキュメントが持つ力は3つある。
 「ビジネスプロセスをサポートする」
 「お客様自身の製品・サービスをサポートする」
 「ドキュメントそのものが商品」
という形である。
基本的に、お客様のビジネスプロセスにきちんと差し込まれた形のドキュメントとして扱う。
ドキュメントが持つインパクトは、
 「製品、サービスの売上」
 「市場導入のタイミング」
 「顧客満足度」
などに直結するサービスである。

(2)富士ゼロックスが提案するサービス
 − 基本的なアウトソーシングのモデル化 −

 XOS(Xerox Office Services)と呼ぶ“マネージド・プリント・サービス”を手掛けている。お客様のニーズの分析から始まり、機種を選定し、セットアップをして、モニタリング・レポートを出して、運用管理までを手掛けて、ドキュメントに関るコスト削減を行うサービスである。
 次が、ドキュメント・プロダクション、パブリッシング・サービス(Document Production and Publishing Service)でお客様のビジネスコミュニケーションに不可欠なドキュメントの校正や印刷までアウトソーシングさせてもらい、オンデマンドで配布のデリバリーまでを運用代行するサービスである。
 3番目は、スキャンサービスで、お客さまの膨大な紙文書の電子化、フォーマット変換から管理までのプロセスを最適化するアウトソーシングサービスである。

 基本的なアウトソーシングサービスは、この3つにモデル化できるかと考えている。お客様のプロセスを可視化し、その上で最適なサービスを提案している。
 「可視化」「最適化」「継続改善」というループを回すことが、私どもの考えるサービスである。

出力環境マネジメントの最適化の事例
 佐川急便様の事例を紹介する。お客様は、出力環境全般を把握したいということを考えていて、ISO14000関係でも紙を3%くらい削減したいという要望があった。これを可視化することに取り組んだ。現地調査をして、台数で30%以上の削減をして、これをやると5年間で20%の削減が可能という提案と、トレーニング、モニタリングなどを提案した。現在導入したところで、どのような効果が出たかはモニタリング中。稼動状況を電子的に吸い上げる仕組みがあって可能となる。

売り上げに直結するサービスの提供に取り組む
 − マーケティング・オンタイムという仕組みのご提案 −


 このような日常的に使う紙を減らしていくコスト削減から、もう少し売り上げに直結するような、お客様の売り上げ等に帰着するサービスがないかを考えてきた。
 カタログとか、販促用の印刷物は、作成を外注している場合には外注を含め、印刷、倉庫の在庫、支店、営業所の物流まで様々ところに問題が内在している。これを可視化し、見える化し、これをどのように売り上げに結びつけるかの仕組みを提案している。マーケティング・オンタイムという仕組みの提案で、それは弊社の中にASPであるデーターセンターを設けて、受発注と運用管理をするサービスを提供する。
 お客さまが資材オーダーを専用のウエブサービスから資材の発注をかける。そこを監視する。或いは、オンデマンドで印刷をする場合には、これをプリントして、宅配業者が配送する。資材担当が過剰在庫になっていないかを、このサイトを確認することで、不要な在庫が発生していないか。あるいは、ある特定なところに在庫が偏っているかが、分かるようになる。
 このシステム導入以前は、週単位で受け付けて、現場の方に注文していたものが、毎日受け付けることができるようになった。

(3)ネットプリント・サービスを始める

コンビニの話をする。2002年にネットプリントというサービスを始めた。最近は法人のユーズが増えている。コンビニに設置した弊社のマルチコピー機、画面をタッチメニューで、キヨスク端末をコンビニに提供している。弊社がサービスを提供している。
 全国のセブンイレブンで文書の打ち出しが可能で、文書を送信する際に予約番号を得る。それを店頭に出かけて予約番号を入力することで、必要な場所で必要な情報を得ることができる。弊社はネットプリントセンターで、お客様からのドキュメントを預かって、予約番号を発行させていただく。端末から入力された予約番号を解読して、間違えなく出力するところまでをする。料金は、コンビニでは通常にコピーを取った時の料金は一枚10円であるが、このサービスを利用頂いたときはプラス10円を頂いて、一枚20円を頂いている。こういう形で付加価値を付けている。
ネットプリントでコンテンツ販売
 ネットプリントは2002年から始めた。その後、予約番号があるのであれば、予約番号でいろいろなものが販売できるのではないかと考え、コンテンツ販売に取組んでいる。楽譜の販売ともう一つは地図の販売。ゼンリンの住宅地図(A3の地図)をお客さまから300円頂き打ち出すサービスを提供している。マーケットリサーチに使うために地域を特定してプリントするサービスである。
質問:ネットプリント・サービスで楽譜が欲しい時、わざわざコンビニに出かけるのではなく、自宅にいてネットからダウンロードすることはできるのか。
回答:このサービスは自宅のパソコンからダウンロードはできない。コンテンツはパソコンからは見えない。楽譜の場合、コンビニの機械からA3で出力することが特徴になっている。

質問:コンビニは場所貸しだけか。コンビニには、どのようなお金が落ちるのか。
回答:300円で楽譜を購入頂くと、コンビニに300円が落ちる。その中からコンテンツプロバイダーと弊社の3者で分けることになる。コンビニのお店に売り上げが立つやり方が好ましいので、そのようなやり方をしている。

質問:このサイトの運営は、誰が責任を持ってやっているのか。
回答:これは、弊社が運営している。

2.リコーグループのサービスビジネスへの取り組み

 リコーITソリューションの多和田紀久氏と荒畑義隆氏から「リコーグループのサービスビジネスへの取り組み」と題して、サービス・イノベーション活動の現状を聞いた。

(1)新しいお客様価値の創出
 − 桜井会長の4階建てソリューション −

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「付加価値を付けてお客様に提供する」と語る、 リコーITソリューションの多和田紀久副所長

 桜井会長が「4階建てソリューション」と言っている。
お客様ベースの考え方から、我々が提供できる価値を段々と付加価値を付けてお客様に提供する考えである。スタンドアロン利用のコピー、ネットワーク対応機器というハードウェアの提供から、帳票印刷などのプリンティングソリューション、文書管理などのドキュメントソリューションをそれぞれの土台の上に構築していくものである。ドキュメントソリューションは日本を中心に展開をしているが、アメリカでもドキュメント管理ソリューションをSAASで提供している。 さらにビジネスソリューションを加えて、最近は4階建てから5階建てと言って、マネージド・プリントサービスやITサービスなどにも力を入れている。
 今日は、ビジネスソリューション、ドキュメントソリューションについて話すほうが良いとも考えたが、本委員会の「製造業のサービス」という観点から、メンテナンスサービスの話を中心にすることとした。

(2)リコーは中小を得意としている
 − 小さいユーザーのネットワーク構築、運営などをサポートする −

 リコーはどちらかというと中小、小さいユーザーさんをサポートする強みを持つ。
 コマツの「コムトラックス」と同じような「@リモート(アット・リモート)」というシステムを持っている。グループのリコーテクノシステムという会社は8千名。この会社は保守をメインにしている会社で、全国で約400のサービスステーションを持っている。サーバーとかルーターなどのネットワーク機器をサポートする拠点があって、24時間体制でサポートする拠点を114箇所持っている。
 中小は「保守をリコーさんにすべて任せるよ」という。中小ではインターネット関係ビジネスを含めてリコーが面倒をみる体制になっている。よって資格者もシスコの資格や情報処理の資格を持っていたり、ファシリティの資格を持っていたりで、オフイスの引越しを含むオフイス全体の面倒をみることにも対応し、建築関係の資格を持って、大きく広く対応している。センターサービスとして、コンタクトセンター、監視統制センター、データーセンターとか、ソフトウェアのアプリコールセンターなどが全国に点在している。

(3)フィールド保守サービス、ダウンタイムゼロへの挑戦
 − 質の高いサービスを提供できるかに取り組む −

 フィールド保守について、2000年代に入っての環境認識と現状、ブロードバンド化、ネットワークの急激な進展とか、ディジタル化とか、カラー化とか、コンペティターの変化とか、ローコスト化とか、法規制、環境問題とか、あと価格競争の激化とかの中で、我々の方がサービスをいかに変えていかなければならないかに取り組んだ。
 One Stopサービスとか、24時間対応とか、アライアンスによってトータルなサービスが提供できないかの課題を一つ一つつぶしていって、いかにお客様に質の高いサービスを提供できるかに取り組んだ。
 特に「ダウンタイムゼロへの挑戦」に取り組む。コピー機は止まると業務が止まってしまう。それを@リモートにお客様の機器をネットでつないで、ITを使っていかにダウンタイムを下げることに取り組んだ。
 どんなシステムがあるかを紹介する。フィールドに4,600名程のサービスマンがいま日々動いている。@リモートの回線を使ってお客様のコピー機の情報が、障害などのアラームの障害の自動検知、トナーの自動配送サービスとか、カウンター自動検針などがお客様とつながって収集できている。現在、100万台の内の60%がこの装置につながっている。以前はFax回線、電話回線であったものが、その内の6割がインターネットになっている。

(4)サービスマンが営業活動をして実績を上げている
 − ネットワーク構築を受注し、お客様に代わって対応するサービス −

 サービスマンが営業として、お客様にブロードバンドのインターネットの環境構築の提案活動をしている。月々何千件というネットワークの構築を受注し、面倒な通信事業者への回線申請を含めてお客様に代わって対応をして、ネットワークを構築している。
 故障依頼を電話で受け付けるテクニカルコールセンターが全国で8箇所あって、ここで電話や自動の障害検出で来た障害通知を、状況に応じ、できるだけ電話対応で完結できるようにスキルを持った人間が対応している。これを上手くやらないと、お客様から「ぐずぐずせずに早く来い」ということになるので、人を手配するためのコール手配の状況、お客様の情報を持っているシステムとか、あとモノが行かないと修理ができないので、部品を管理するシステムが準備されている。いろいろな技術情報を蓄える技術情報支援システムなどを動かして、お客さまのシステムをサポートしている。
 サービスマンは部品の在庫を携帯で見ることができたり、携帯から発注を掛けたりすることができる。携帯でいろいろな情報を見ることができるシステムになっている。保守レポートを事務所に戻ってからでなく、現場で携帯から保守レポートを作成できるようしていて、効率を良くしている。

CEは技術力、解決力、提案力を持って営業している
 − お客様の一番近いところに入りやすく、直ぐ話しを聞いてくれる −

 “NETBegin BBパック”というサービスパックは、お客様の小規模なインターネット接続と、LAN環境を我々が提供するサービスである。お客様がインターネット環境を構築し@リモートに接続することによって、その後の保守の手間が掛からなくなるという効果が出てくる。お客さまは小さいところであり、販社の営業マンも営業をするが、弊社の場合はサービス担当がお客様のところに行って営業をしている。  弊社のCE(Customer Engineer:カスタマー・エンジニア)は一人3役ということで、技術力、解決力、提案力を求められている。
 最近では、大手だけでなく小さなところでもセキュリティがあって、お客さまのところに営業部員が入りにくい。しかし、サービスマンはいつもお客様の一番近いところに入り易く、直ぐ話しを聞いてくれるというメリットがある。サービスマンへの信頼度が、営業の数字にも表れている。
最後は人対人
 CMS(クライアントマネージドサービス)といって、パソコンのインストールから最後の廃棄までのサービスをやっている。小さいお客様では、パソコンのインストールが出来ないということもあるので、ハードだけを売るのではなくてはなくて、プリンターを含めて運用・保守支援までを一括して保守契約をするサービスをしている。コピー機の売り上げが落ちても、サービスで売り上げを伸ばしている。
 障害が発生した時、きちんと直すことで、現場で人と人の信頼回復に努めている。日々の信頼関係を積み上げて、それを販売に結びつけている。最後は人対人である。

質問:CEに対してどのような教育をし、どのような評価をしているか。
回答:全国で7つほどある研修所で1年間ほどの技術的な教育を受ける。現場に行って、最初はOJTで先輩と一緒に仕事をして独り立ちできるようにしている。評価項目は、きっちり評価する。お客様満足度評価に取組んでいる。

質問:国内の全国400箇所のサービス拠点は、すべてリコー直営でやっているのか。また、海外はどう対応しているのか。
回答:直営でやっている。400拠点を維持することが、負担になるが、強みになっている。PCとかネットワークとかの保守にその強みが出せる。海外はディラー中心であったが、ディラーを買収するなどをして直営に変えてきている。


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